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ミュージシャンのお道具箱(その7)~INSPi北の音楽的文房具「ファイル」~

「この木なんの木」のCMでおなじみ、アカペラグループINSPiのメンバーである北が、ミュージシャンと文房具の懸け橋となるべく執筆しておりますこのコラム。今日はファイルのお話です。

文房具 ファイル・アルバム
使い終わった譜面は1曲ごとに26穴のビニールファイルに収めてファイルボックスへ。再び使うときにはバインダーに収めて劣化を防ぎます。
使い終わった譜面は1曲ごとに26穴のビニールファイルに収めてファイルボックスへ。再び使うときにはバインダーに収めて劣化を防ぎます。 全 5 枚 拡大写真
 「この木なんの木」のCMでおなじみ、アカペラグループINSPiのメンバーである北が、ミュージシャンと文房具の懸け橋となるべく執筆しておりますこのコラム。今日はファイルのお話です。

 ミュージシャンの扱う書類のほぼ9割は譜面と言っていいでしょう。世の中には譜面を使わないで音楽を作りあげていく人もいますが、INSPiの音楽を作るはじめの一歩は、譜面を作るところから始まります。演奏しようとする曲が決まると、アレンジャー(INSPiでは基本的に吉田圭介)はその曲のメロディやコード進行をもとに最終的な理想の音を頭の中で鳴らします。頭の中に浮かんだ音を、メンバーそれぞれの音域や歌いまわしに合わせて音符をひとつずつ置いていき、譜面として仕上げます。作詞作曲やアレンジメントはとっても孤独な作業。自分の中に生まれたものをすくい上げる、生まれてくれない時はどうにかしてひねり出す必要があります。その曲でハーモニーを奏でる時の自分自身の喜び、そして聴いてくれる人の喜びを想うことがとても励みになります。

 譜面を受け取ったメンバーは、リハーサルが始まるとそれを見ながら、何はともあれ歌ってみます。アレンジャーの頭の中にある理想の音と現実に出している音に違いがあるのが当たり前ですので、歌いながらその都度「ここはこんなイメージ」「ここからちょっと盛り上げて」等の指示を出します。他のメンバーも歌いながら「ここはこんな風に歌いたい」「この音符変えていい?」等の意見を出し合い、譜面に加筆修正を入れていきます。

 そうして出来上がった修正入りの譜面。実はINSPiのステージでは暗譜(譜面を暗記する)が基本のスタイルですので、皆様の目に触れることはめったにありません。覚えてしまった譜面は曲名のあいうえお順でファイルボックスにストックして置きます。その総数600曲以上!我ながら15年でこんなに歌ったのかと感慨深い思いもありますが、コーラスグループの大先輩ボニージャックスさんはデビュー55年を超えて譜面のストックが5000曲を超えているそうですから、僕らはまだまだひよっことも言えます。

 一度覚えたとはいえ、限られた公演時間でそれらすべてを常に歌うというわけではないので、どうしても忘れていく曲の方が多くあります。過去の譜面はデジタルデータでも保存し、INSPiメンバーは誰でもいつでもどこでも見ることができますが、いざ「あの曲を久しぶりにやろう!」となった時、リハーサルの現場にはやはり紙の譜面を持っていきたくなります。その曲を練習していた時の思いが、譜面と手書きの文字にしっかり残っている気がするからです。

 音楽は、特にライブでは、鳴ったら消えてしまう儚いものです。聞いてくださる皆様と音楽を共有する時を想って作った譜面とそこに残されたメモは、その時その時の僕たちと皆様の想いの結晶。ファイルボックスに譜面をストックしていくたびに、宝物が増えていくような気持ちになります。

INSPi 北剛彦
アカペラグループ「INSPi(インスピ)」のVocal担当。文房具好き。出身地である静岡県磐田の「いわた茶PR大使」を務める。 / INSPi:2001年フジテレビ「ハモネプ」出演がきっかけとなりメジャーデビュー。2005年2月より日立CMソング「この木なんの木」を担当。

《INSPi 北剛彦》

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