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貼り付けることに意味がある…  付箋の力に勝手にふるえてみる

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貼り付けることに意味がある…  付箋の力に勝手にふるえてみる<1枚目>
貼り付けることに意味がある…  付箋の力に勝手にふるえてみる<1枚目> 全 2 枚 拡大写真
 今回も付箋の出てくる映画を紹介する。

 2017年公開の映画「勝手にふるえてろ」は、恋愛経験ゼロのOLヨシカが中学時代の片想いの相手と、自分に告白をしてきた同期の社員との間で揺れ動く様を描いた作品だ。

 芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を原作とした本作は、一見すると恋愛のドタバタ模様を描いたコメディのようだが、話が進んでいくにつれ、もっと濃密で身に詰まされるテーマが現れる。「いわゆるラブコメ」として油断していると思わぬしっぺ返しを食らう羽目になる。

 さて、この作品に於いて付箋はキーアイテムとして登場する。細長い、赤い付箋だ。

 ヨシカに告白をした同期の社員〈二〉が、ヨシカを意識するきっかけとなったのが、付箋なのである。〈二〉が働く部署へ書類のミスを指摘しにやって来たヨシカが、胸に赤い付箋をくっつけていたことで、なんだか彼女のことが気になりだしたのだという。ヨシカの仕事は経理だ。書類に目印として貼りつける付箋が、たまたま胸にくっついたのだろう。

〈二〉はその偶然をかなり大事に思っているようで、クリスマスにはわざわざ箱に入れて赤い付箋の束をヨシカにプレゼントする。ヨシカは「大事な時に使う」と引き気味に答えて、これを鞄に突っ込む。

 付箋には、主に二通りの使い方がある。

 一つは文字を書き込み、メモとして貼り付ける方法。もう一つは、目印として書類などに添付する方法だ。

 前回紹介した「海よりもまだ深く」では、付箋はアイデアを書き込み、壁に貼り付けるメモとして使われていた。一方、「勝手にふるえてろ」での付箋の役割は、二種類の使用法のうちの後者に当たる。二つの作品では使われている付箋の形状も大きく異なり、「海よりもまだ深く」では正方形だったのに対し、「勝手にふるえてろ」では細い長方形だ。それも、文字を書き込むには色が濃い。

 目印として使うのであれば、文字は必要ない。その紙片の存在さえ示せれば、それで役目を果たしたことになる。たとえば書類の記載が間違っている箇所に貼ることで、ミスを指摘するといったように。「付箋を貼る」という行為そのものが、一種のメッセージになり得るのだ。

 プレゼントされた付箋を鞄に突っ込んだヨシカだが、物語終盤、これを使うべき「大事な時」が彼女に訪れる。そこではやはり、付箋が「目印」として使われ、それを貼ることでヨシカは「メッセージ」を発している。そして無言な(何も書いてない)分、そこからは余計に強い意志が感じられる。

 一枚の小さな付箋が、強烈なメッセージを突き付けてくる。この作品は、付箋の力を文房具の枠に収まらないほどに引き出している。

東十条王子
鉛筆シャープの書き心地に夢中です。落書きばかりしています。文房具に関する知識はまだまだなので、勉強していきたいと思います。ちなみに名前は駅名です。どこかの王族ではありません。

《東十条王子》

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