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歌手マルシアさんに聞く「キャンパスノートに綴った30年、そしてこれから」

 舞台やミュージカルでも大活躍の歌手マルシアさん。来日以来、愛用しているキャンパスノートに何を綴っているのか。現在の思い、今後の活動についてお話を伺いました。

文房具 ノート・手帳
デビュー30周年を迎えた歌手・マルシアさん
デビュー30周年を迎えた歌手・マルシアさん 全 8 枚 拡大写真
 1989年1月に歌手としてデビュー。シングル「ふりむけばヨコハマ」がいきなり15万枚超のヒットとなり、その後、ドラマやミュージカルなど活躍の幅を広げているマルシアさん。デビューから30周年を迎えた2019年、生まれ育ったブラジルと、歌手として華開いた日本、その2つの国に思いを馳せながら、新曲を発表。4月27日からは、あえて観客との距離が近い小さなライブハウスでのツアーを始めます。

 そのマルシアさんが来日以来、ずっと愛用している文房具。それは、なんと「キャンパスノート」だとか。情報を耳にして早速ご連絡すると、インタビューをご快諾いただけました!マルシアさん流「キャンパスノート」の使い方や、30周年を迎えた現在の思い、今後の活動についてお話を伺いました。

インタビュー当日、来日当時から書き綴り続けている日記をお持ちいただきました

ブラジルの日系人社会でふれてきた日本文化



--デビュー30周年おめでとうございます!まずは、17歳でTBSの歌謡選手権に出場されるまで、どのような少女時代を過ごしてきたのかをお聞かせいただけますか?

 ブラジル生まれ、ブラジル育ち。父方の祖父母が静岡県富士市から、母方の祖父母が四国の高知から移民としてブラジルに渡ったので、私は日系3世にあたります。ブラジルにいながらにして、毎日食事の際には「いただきます」「ごちそうさまでした」を言っていましたし、知らず知らずのうちに日本の文化の中にいました。

--日常生活の中で、日本文化に常にふれていらしたのですね。

 そうですね。幼稚園まで、おけいこごととして日本語も話す日系人の学校にも通っていました。

 母は美空ひばりさんが大好きでした。ひばりさんの本名からお借りして、私のセカンドネームを「かずえ」と名付けてくれたほどです。ひばりさんは「わ(和)」の和枝さんですが、私は「いち(一)」の一枝ですけれど。

 当時から日本の童謡も歌っていました。毎週金曜日に母が参加していた楽団の練習会があって、私も小さい頃から一緒に通っていました。そこで「しゃぼん玉」などの日本の童謡を覚えました。

--日系の方々で組織された楽団なのでしょうか?

 そうです。「コスモス」という名の楽団です。ブラジルはフェスティバルの文化が盛んなので、桜祭り、桃祭りなど一年中たくさんの祭りやフェスが開催されていました。そのような催しでは必ずステージがあって、コスモス楽団も演奏したり歌ったりすることがありました。

デビュー30周年を迎えた歌手・マルシアさん
「歌はあくまでも趣味、夢は建築士だった」と話すマルシアさん

 そのうちブラジルにもカラオケブームがやってきて、各地でカラオケ大会が開催されるようになりました。バスで10時間とか12時間かけて、衣装をかついで各地の大会に行っていました。それが土日のお楽しみで、平日は学校に行くという生活です。歌はあくまで趣味で、私が目指していたのは建築士だったんですよ(笑)。

--楽団のほかに、日本の歌にふれる機会はあったのでしょうか?

 1980年代には、日本から輸入された「平凡」や「明星」といった雑誌が買えるお店や、日系人のためのビデオレンタル屋さんもありました。日本の音楽テープを買って聴いたり、好きな松田聖子さんのビデオを観たりしていましたね。「8時だョ!全員集合」も観ていました。日本語の意味はわからないのに、面白さは伝わってくるんですよ。

 日本のいろんな歌番組も放送されていました。「夜のヒットスタジオ」「レッツゴーヤング」、それから黒柳徹子さんが司会をされていた「ザ・ベストテン」。それからドラマの「おしん」は家族みんなで観ていて、私も意味がわからなけれど涙が出たのを覚えています。NHKの紅白歌合戦も生放送で観ていました。リアルタイムの日本と触れ合える貴重な時間でしたね。

日本の歌手になる…奇跡は突然に



--ブラジルで開催されたTBS歌謡選手権への出場が人生の大きな転機だったと聞きました。出場のきっかけは、さきほどお話いただいたカラオケ大会遠征の一環でしょうか?

 TBS歌謡選手権には、実はピンチヒッターとして出たんです。私が住む町の代表が体調不良になって、3日前に急遽私にバトンが渡ってきました。練習も何もしておらず軽いノリで出たのに、それがなんと準優勝をいただけたんです。でもその時、感じたのは嬉しさよりも、悔しさでした。あともう少しで優勝だったのにと、人生初の悔しさを味わいました。その当時、TBS歌謡選手権の優勝者には渡日が約束されていたんです。優勝を逃し、日本に行けない事実を突きつけられたことで、はじめて「日本に行ってみたい」という強い気持ちが芽生えました。

 そのリベンジをかけて、翌年に出場したテレビ東京主催の外国人歌謡大賞では、ありがたいことに優勝できたのです。ブラジル代表としての渡日の夢も叶い、日本での決勝大会では賞も頂くことができました。すっかり満たされた気持ちでブラジルに帰国して、建築士になるための普段の学生生活に戻りました。

 日常生活に戻った矢先、審査委員長だった猪俣公章先生が突然ブラジルにいらしたんです。「歌手になりたいか?」と誘われました。思ってもみなかった、奇跡の一瞬でした。

--当初から日本で歌手になることを目指していたわけではなかったのですね。

 自分の人生が日本にあるとはまったく想像してもいなくて。今はわりと簡単に世界の情報が入る時代で、地球が小さく感じられますが、80年代当時はすべてが遠い。まして地球の反対側のブラジルから日本に行って暮らすなんて、考えもしませんでした。でも逆にとらえれば、想像もできないほどの大チャンス。だからスカウトされたとき、思わず「はい」と答えました。

 もちろん家族には止められました。移民としてブラジルに渡った祖父たちだから、違う国に行って生きることがどれほど大変か、心配したんでしょう。けれど「私の人生だから、行かずに後悔するより、行って後悔したい」と説得して日本に来ました。

デビュー30周年を迎えた歌手・マルシアさん
「行かずに後悔するより、行って後悔したい」と、家族の心配を押し切って来日したという

 当時17歳で若かったこともあり、怖いもの知らずで、夢にあふれていましたね。「弟子」という言葉の意味さえ知らないのに、猪俣先生のところに弟子入りしました(笑)。それからは犬の散歩やお掃除、お料理をして、日本の礼儀作法をおぼえる毎日。日本語が話せなかったので、日々の生活で日本語を叩き込んでいました。

来日以来、思いを綴り続けたキャンパスノート



--日本にいらしてから日本語を学び始めたのですね。日本語学習には、コクヨの「キャンパスノート」を使用されていたとお聞きました。「キャンパスノート」との出会いは何がきっかけだったのでしょうか?

 文房具屋さんで自然と手にとりました。当時も今も、ノートといったら「キャンパスノート」というイメージがあります。

 弟子としてやることはいっぱいあるんですが、先生が昼寝なさっているときなど、わずかな空き時間には、日記を書いたり、歌詞を書いたり、歌を自分なりに勉強したりしていました。先生が直接歌を教えてくれるというよりも、ノートに歌詞を書きながら、自分で日本語と歌を勉強していたんです。

--勉強のために、どなたの歌詞をノートに書かれていたのでしょう?

 松田聖子さんや中森明菜さん、早見優さんなど当時のアイドルの歌詞を書いていました。猪俣先生がテレサテンさんを勉強しろとよくおっしゃっていたから、テレサさんの曲もノートに書いていて、それがきっかけで歌謡曲の世界に入っていきました。

--お忙しい中でも日記を書かれていたのは、たった1人で来日して寂しさや思いをぶつける相手としての効果もあったのではないでしょうか?

 書くことによって、自分の心にある思いを言葉にしながら発散していました。今でも読み返すと、こんなことを思っていたんだな、こんな素敵な時間があったんだなと思い出しますよね。忙しいと忘れてしまうことの方が多いから、今でも毎日日記を書いています。最近はちょっと短めですけど(笑)。

 言葉にしてノートに書くとやっぱり癒されますし、誰にも言えないことも言える。もしかして私がいなくなったときに娘が読んで「ああ、そう思っていたのか」と気持ちを汲んでもらえるかも、そういう気持ちもあります。

30年来使い続けているキャンパスノートには、当時の日記や歌詞を覚えるためのメモがびっしり!

--今でも「キャンパスノート」を使われているんですね。

 そうです。ずっと使い続けてきたので愛着がありますね。私は何でも書いて覚えるんです。何度も何度も何度も、書いて書いて書いて、歌詞や舞台のセリフを覚えます。演出家からのダメ出しもノートに書いています。

 それからノートには、プライベートでも勉強のことでも、今日やることを全部書いています。TO DOリストのようなものです。今日やらなければいけないことを1番2番と順番をつけて、とにかくそれを見ながら、やることをこなして、消していく。これは効率が良くて、集中力が何倍も高まります。

音楽を通して、日本とブラジルの架け橋に



--演技や歌のほか、ブログなどいろいろな表現をされていますが、一番思いを伝えやすい表現は何でしょうか?

 日記をはじめ、文章を書くことは好きです。でも今の私には、歌ですね。2月にBillboard Live TOKYOでライブをしました。30周年記念のステージで、タイトルはその名も「Debut 30th Anniversary Kick Off Live~私はどうしてここに?~」。私はどうして日本に来たのか、もう一度自分を初心に戻すという意味もありました。歌手としてスカウトされたわけですから、これからも「私は歌手です」と胸を張れるような歩み方をしたいんです。

--マルシアさんにとって、ステージはどのような場所でしょう?

 ステージはやっぱり特別で、いろんなことをすべて忘れさせてくれる場所です。ステージでは、人間マルシアとしての今の自分の思い、エネルギーをぶつけています。

 キックオフした30周年のツアー、これからは日本中の会場で、生の歌声を届けていきたいです。浜松のライブハウスをスタートに選んだ理由は、浜松市には日系ブラジル人の方が日本でもっとも多い街だからです。それに静岡県は父方の祖父母の出身地でもあります。自分のルーツをたどりながら、日本とブラジルの架け橋になれたらいいな、それが音楽で実現できたらいいなと思っています。それが私の喜びです。それもあって、新曲のタイトルは「ALEGRIA」、ポルトガル語で「喜び」という意味です。

 日本全国の会場で、聴きに来てくださる皆さんに、できる限り近い距離で、素のマルシアとして会話ができるようなツアーにしたいですね。

--30周年を迎えられた現在だからこその、磨かれた価値観ですね。

 50歳になって、すごくいろいろな思いがあふれてきました。若いときは飛行機で飛んでいるようなスピードで突っ走っているところがありましたけど、今は落ち着いて電車くらいの速さで(笑)、いろんな景色が鮮明に見えるようになりました。そんな思いもノートに書き留めながら、これからもしっかり自分の足で走っていければと思っています。

2019年2月、デビュー30周年のキックオフライブを開催したマルシアさん

 今回のライブでは、あらためて自己紹介をしようと思っています。小さい頃に聴いていたのはこんな曲、若いときに出会ったのはこんな曲、日本に来たときに聴いたのはこんな曲とか、その頃の思いも乗せて伝えたいですね。30年間いろいろなできごとがあった今までの歌手人生と同じように、ジャズもラテンも日本の歌謡曲も、さまざまなジャンルの音楽を交えながら。今回はパーカッションとピアノだけで、その場で感じたものを歌おうと思います。

--温かいライブになりそうですね。本日はありがとうございました!

 マルシアさんは、テレビで拝見する印象どおり、気さくでどのような質問にも一生懸命にこたえてくださるチャーミングな方でした。使い込まれた「キャンパスノート」には、びっしりと文字や絵が書き込まれていて、まるでマルシアさんの30年来の相棒のようです。書くことで自分を見つめ続けるマルシアさんならではのこれからのステージ。とっても楽しみです。

今後の公演情報


単独ライブ


・浜松公演
日時:2019年4月27日(土) 14:00開場/15:00開演
会場:Hermit Dolphin(静岡県浜松市中区田町326-25 KJスクエア2F)
チケット:前売5,000円 当日5,500円(1ドリンク別途500円)

・東京公演
日時:2019年5月11日(土) 18:00開場/19:30開演
会場:ラドンナ原宿(東京都渋谷区神宮前4-28-21 ハーモニー原宿地下1階)
チケット:前売・当日6,800円(飲食代別途要)

日系南米移民・笠戸丸入港111周年記念コンサート
『NIPPONIA~ 南米の歌・南米で愛されるニッポンの歌』


【演出・ナビゲーター】 宮沢和史
【出演】 宮沢和史・マルシア・アルベルト城間・大城クラウディア
【演奏】 ディアマンテス(仲宗根トム・白川ミナ・玉城チコ)
【協力】雑誌 月刊ラティーナ
・東京会場
日時:2019年4月22日(月)
1stステージ 開場17:30/開演18:30
2ndステージ 開場20:30/開演21:30
会場:Billboard Live TOKYO(東京都港区赤坂9丁目7番4号東京ミッドタウン ガーデンテラス4F)
チケット:サービスエリア8,200円 カジュアルエリア7,200円(1ドリンク付き)
・大阪会場
日時:2019年4月24日(水)
1stステージ 開場17:30/開演18:30
2ndステージ 開場20:30/開演21:30
会場:Billboard Live OSAKA(大阪市北区梅田2丁目2番22号ハービスPLAZA ENT B2F)
チケット:サービスエリア8,200円 カジュアルエリア7,200円(1ドリンク付き)

舞台「オリエント急行殺人事件」


【出演】小西遼生、室龍太(関西ジャニーズJr.)、春風ひとみ、伊藤純奈(乃木坂46)、宍戸美和公、松村武、伊藤梨沙子、田鍋謙一郎、マルシア、田口トモロヲ
【スタッフ】河原雅彦(演出)
【チケット】全会場共通:全席指定9,000円(税込)
【公式ホームページ】
www.orientexpress-stage.jp
・大阪公演
日時:2019年7月26日(金)~28日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
・名古屋公演
日時:2019年8月1日(木)~2日(金)
会場:ウインクあいち 大ホール
・東京公演
日時:2019年8月9日(金)~18日(日)
会場:サンシャイン劇場

《渡邊淳子》

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